荒木先生 ~ 短篇作品『Rohan au Louvre (岸邊露伴走進羅浮宮)』 取材記

JoJoFans

2008年秋、荒木先生はフランス・パリに向かった。2003年のパリでの個展「JOJO IN PARIS」開催以来、５年ぶりの渡仏。目的地はもちろんルーヴル美術館。『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の取材のためだ。荒木先生は物語を描く際、取材を重視する。「例えば壁の質感だったり、どんな雑草が生えてるのか? だったり、行ってみないとわからない事って結構あるんですよ。その場所の空気っていうか。実際にその場に行って、見て、触れることで、描く時の説得力が違ってくると思うんですよね」と語る。それがかつて幾度となく足を運んだルーヴル美術館であっても。「プライベートで行く時とは全く別ですね。物語を描く前提なら、視点も変わってくる」と荒木先生。

ルーヴル美術館。800年前に築かれた要塞を礎とする巨大な建造物には、「モナ・リザ」や「ミロのヴィーナス」など、誰もが知る古典美術作品が膨大に収蔵されており、年間の来場者数は850万を超える。世界最大級の規模を誇り、おそらく、世界で最も有名な美術館。荒木先生はルーヴルについて「人類の祖先が作った作品にお会いしに行く場所、という感じですね。日本人が神社に参拝するような、敬意を抱く対象と言うのかな」と語っている。多くのアーティストがその収蔵作品に刺激を受け、学び、新たなアートを創造しており、ルーヴルもまた、新たな芸術を生み出すことに協力的だ。今回、荒木先生が参加した「バンド・デシネ（漫画）プロジェクト」も、近代以前のアートと現代アートをつなぐ試みと言えるだろう。




取材に訪れた荒木先生を迎えてくれたのは、ルーヴル美術館出版部副部長のファブリス・ドゥアール氏と、通訳を担当してくれるメセナ部の境雅実氏。取材は２日にわたって行われ、初日はルーヴルの地下など、普段立ち入れないエリアをまわる。２日目は休館日のルーヴルを開放してもらい、じっくりと展示の様子などを見てまわるという流れだ。

まずは職員の方々の事務所へ。日々の業務の内容や就業時間、どんな部署があるのか、などを質問していく。興味深かったのはルーヴル美術館の歴代館長は、ルーヴルの建物内に住んでいるという話。「何て贅沢な…」と絶句する荒木先生。





それから特別に入館パスを作成してもらい、美術館内へ。日本ではあまり知られてないことかもしれないが、ルーヴルには防災上の理由から「消防士」が常駐している。ルーヴルの一画に彼らの詰所があり、24時間警備にあたっているのだ。その消防士が２名、取材に同行してくれた。通常立ち入れないエリアに入るため、危険防止のためにも彼らの同行が不可欠なのだという。作中で露伴がルーヴル美術館のスタッフ２名と、消防士２名とともにルーヴルの地下に向かうが、これは実際に荒木先生が取材した際の人員構成なのだ

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頼れる同行者とともに、さっそくルーヴルの地下へ。地下や屋根裏をメインに見せてもらう事について、荒木先生はこう語っている。「ルーヴルは広大でコレクションも膨大。全部描くとキリがないと思ったので、一箇所だけに限定して描こう、と。それで、普段立ち入ることが出来ず、何か不穏なものがあってもおかしくない地下に絞りました。取材で何が知りたいかと言うと、どうやって地下に行くのかということ。階段なのか、エレベーターなのか、何メートルくらい歩くのか。電気のスイッチがどこにあるのかとか、埃や壁の材質…そういったものを知りたいんですよね」。





ベースは18世紀の建物だけに、階段ひとつとっても狭く、照明も限られている。さらに地下は迷路のように入り組んでいて広大。ここで置いていかれたら、地上に出るのは苦労するだろう。

もちろん、キチンと整備され、車も入れるエリアが大半なのだが、昔のたたずまいを残しているエリアもあるのだ。職員の方でも全てを把握している訳ではないらしく、ドゥアール氏も境氏も初めて足を踏み入れる場所もあるという。これは確かに想像だけで描くのは苦しい。実際に見て、触れて、空気を感じれば、描写の説得力が違ってくる。





地下を進んで行くと、かつて倉庫だったエリアがあった。ルーヴルのすぐ近くを流れるセーヌ川が、地球温暖化の影響で氾濫する可能性を考慮して、ここに所蔵されていた美術品は全て、整備されたエリアに移されたのだという。石造りの部屋の中に、古い木製の棚だけが残されている。これが作中の「Z-13倉庫」。





実際にそういう名称の倉庫はないのだが、このエリアをモデルにしている。そしてそのエリアの雰囲気は、確かに「謎の絵」や「伝説の美術品」が隠されているのでは…というミステリーを想起させてくれるものだった。ルーヴルのスケールと歴史を感じさせてくれる場所。興味を引かれた荒木先生は、ドゥアール氏や消防士のお二人に様々な質問をし続けたのだった。

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地下ツアーを終えると、続いて、ルーヴルの「屋根裏」にあたるエリアへ移動する。とんでもないスケールの空調設備や、昔ながらのたたずまいを残す倉庫などが同居する、歴史を感じさせるエリアだ。

途中、鍵がかかっていて、なかなか開けられない場所もあったり、管轄の関係で許可がおりるのを待たなければいけない場所もあった。迷路のような道のりを進み、人ひとりがやっと通れる螺旋階段を、うっすら差し込む陽の光を頼りにひたすら登ると、ようやく視界が開け、屋上にたどり着く。この屋上も、そうそう立ち入れない場所なのだ。

取材が終わると、フュチュロポリス社（ルーヴルのバンド・デシネプロジェクトで編集作業を担当）の担当編集が合流し、リシュリュー翼にある「LE CAFE MARLY」で打合せへ。ページ数や本の形態、開きの方向、描き文字の扱いなど、詳細をここで煮詰める。

荒木先生は「描き文字（擬音）は絵の一部なので、差替えないで」と説明し、ドゥアール氏も同意。「だって、アメコミの擬音がカタカナだったら、嫌じゃない？」と荒木先生。さらにストーリーのおおまかな流れを伝え、注意点などを話し合って、初日の取材・打合せは終了した。
（同行した担当編集もかつて観光でこの「LE CAFE MARLY」を訪れたことがあるが、まさかそこで打合せをする日が来るとは夢にも思わなかった。）









取材２日目は休館日。観光客がいないガランとしたルーヴルを訪れた荒木先生。「モナ・リザ」も「サモトラケのニケ」も「ミロのヴィーナス」も独り占め状態で鑑賞出来るのだ（この上なく贅沢な時間を提供してくれたルーヴル美術館に感謝）。館内を見てまわりながら、ドゥアール氏に「邪悪な絵と言われていたり、怖い由来があるような絵画ってありますか？」と尋ねる荒木先生。ドゥアール氏は豊富な知識で、考えようによっては恐ろしい経緯で描かれたと言える絵画や、興味深い由来を持つ作品などを教えてくれた。さすがに呪いの絵画だの、怨念のこもった彫刻だのは存在しないが、「これだけの収蔵作品です。そういうものも、ひょっとしたらあるのかもしれない」と悪戯っぽく笑うドゥアール氏。ルーヴルは、それが冗談に聞こえない歴史とスケールを持っている。荒木先生は丸一日、貸切状態のルーヴル美術館を満喫し、存分に構想を練ったのだった。





このような取材を経て描かれた『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』。フランスでは３月下旬にルーヴル美術館内の書店と、ブックフェアでの先行販売が開始され、４月８日に一般発売になった。日本版の詳細も決まり次第お知らせしていくので、ウルトラジャンプ本誌と、ウルトラジャンプエッグをチェックしていただければ。

次号６月号では、いよいよクライマックスとなる〈後編〉が掲載。本レポートでは荒木先生の特別インタビューをお届けします！

吉良吉影

荒木大师美丽的笑容一定是很随和的人士阿！

吉良吉影

荒木大师美丽的笑容一定是很随和的人士阿！

wswjws

老师的动作为米总有JOJO感。。。难道拍照的人故意的？还是老师故意的？？

uling

哇 要不是文字看不懂 我早就看下去了 支持一下

dioaven

好想看看这部作品啊

空条俊子

漫画家都很喜欢这种帽子吗
手冢，不二雄都喜欢